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2022.09.07

【実施報告】コンペ300戦無敗のトップエンジニアが伝授!エンジニアが磨くべきビジネススキル


講師:井下田久幸氏(ドルフィア株式会社 代表取締役)
ゲスト:玉木伸之様(横河電機株式会社 未来共創イニシアチブ プロジェクトリーダー)

9月7日(水)に「コンペ300戦無敗のトップエンジニアが伝授!エンジニアが磨くべきビジネススキル」と題した無料セミナーを開催しました。小社刊『コンペ300戦無敗のトップエンジニアが教える 理系の仕事術』の著者・井下田 久幸氏と、社会インフラを支える事業展開している横河電機株式会社の玉木伸之様が登壇。井下田氏からコンペ300戦無敗の秘訣、エンジニアに求められるスキル、玉木様より横河電機の人材育成の取り組みについてご説明いただきました。セミナーの内容の一部をご紹介します。

講演「これからのエンジニア人材に必要なスキルとその背景」井下田 久幸氏

これからの時代に必要な人材になるためには、一つの専門分野を持つ人材だけでは、企業が新しい時代に対応していくことはできません。これまでは、「T型人材」という一つの専門分野を持ち、それに加えてより広い知識も有している「ジェネラリスト」×「スペシャリスト」が必要とされていました。しかし、激変するビジネス環境の変化に対応したり、新たな価値観やイノベーションを生み出したりするためには、さらに専門領域を増やした二つの専門分野を持つ「π型人材」の需要が増しています。
エンジニアとして活動していたときに、ソフトウェアのコンペで300戦無敗を達成したことがありますが、そのときの経験から、エンジニアだからこそできる秘訣をお伝えします。
 
【秘訣①】4つの「不」を順に取り除く
お客様が購入の決断に至るまでに「不信」「不要」「不適」「不急」の4つの「不」があります。お客様先に営業とともに同行し、安心感を持っていただきます。その際にお客様が実際に使っているデータを借りて、そのデータを使ったデモンストレーションを見せることで、リアリティがあり、お客様の「不」を取り除く説得材料になります。
 
【秘訣②】潜在ニーズに気付き、応える
戦術は、「因数分解」と「サブリミナル」です。因数分解を通じて、一見難しく見える事象をわかりやすく分解します。お客様の悩みは複数の要因が絡み合っていることが多く、「なぜそのようなことが起きているのか」がお客様自身もわからず、解決方法の検討がつかず、悩んでいます。ファシリテーション力を生かしてお客様に寄り添い、お悩みを聞き、要因に分けて解決策を提案すると、採用いただけるようになります。
 
「考え過ぎて、行動できない人」「考えずに行動して、無駄ばかりする人」がいますが、考えることと行動することの両立が必要です。勝ち癖をつけるために必要な、考えるとき・行動するときの7つの習慣があります。「ライバルの提案をとことん理解」「ズームインとアウトで視点を変える」「時間軸を長くとって損得を判断」「与えられた選択肢以外も探す」「学ぶ時はアウトプットを決めてから」「面倒くさいことから着手」「他責を排除し、自分のできることに集中」を意識してください。
 
競合他社と競争して勝ち取っていくだけでは、市場の限界があります。時間軸を長くとり、未来を見据えることで価値を膨らませていくことができます。相互満足の変革を見つけ、継続性の視野を持つことが求められる時代です。全体のパイを増やして、争いを避ける視点を持ちましょう。
考える時は、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」「時間」「感情」の経営の6資源を大切にしています。データの網羅性、公平性、信憑性、体系性の視点を持つと、正しく情報を判断できます。さらに、バックキャスティング思考を身につけ、ありたい未来を構想し、実現可能なプロセスを考えて逆算していきましょう。

これからのエンジニアに必要なキーワードは「共創」。「I」と「You」から、「We」の時代です。自分自身の時間は増やせませんが、他人の時間を創ることで貢献できます。例えば、ソフトウェア開発の仕事の場合、そのソフトウェアの利用者の時間を1週間節約できることになったとします。そのシステムの利用者が100万人いると「1週間/人×100万人≒2万年」の時間創出に繋がります。他者への最大の貢献は、新しい時間を創ること。私たちにとっての仕事とは、自分の時間を誰かの喜びに変えることです。

事例紹介「横河電機における未来志向の対話と共創を加速させるエンジニア育成」横河電機株式会社 玉木伸之様

YOKOGAWAは、2021年5月の中長期経営計画の発表と同時に、「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」というパーパスを掲げました。
気候変動や社会の分断など地球規模のリスクが高まり、環境・社会・経済の持続可能性が問われるなかで、企業が社会課題の解決に向けてどのように貢献できるのか、貢献するべきかについて明らかにすることが重要であるとYOKOGAWAは考えています。
「測る」は、YOKOGAWAの原点であり起点です。ものごとを測り、今ある状態をとらえ、見通し、そこから導き出される情報に価値を見出してきました。価値ある情報は、さまざまな産業におけるお客様との信頼関係を築き、企業と企業、産業と産業を結び付けていきます。
このパーパスには、その力を今日のさまざまな社会課題の解決に生かし、人と地球が共生する未来をかなえたい、そうした思いが込められています。
 
新しい社会経済パラダイムへのシフトが進み、正解がないVUCA時代において、未来を構想し、新しい価値を共創する人財が不可欠です。先を見据えたお客様やパートナーと共有する未来シナリオの創出や、新しい時代に対応できるリーダー育成とネットワーク構築を実現させるために、2019年12月、HR部門主導の「未来志向の組織横断型プロジェクト」をスタートしました。
20代半ばから40代前半の若手社員を各部門から選抜し、「未来構想力」「俯瞰力」「変化対応力」「価値共創力」を高め、2035年の未来シナリオを描くプロジェクトです。
 
シナリオ作成の手法として、未来予測(フォアキャスティング)があります。過去の実績や現在のケーパビリティを前提に現在の延長上に未来を描くためには有効ですが、事業の前提となる外部環境が変化し、現在の環境が維持できない未来には活かすことができません。
このプロジェクトでは、シナリオプランニングの手法を用いています。未来の外部環境変化を想定し、将来を左右する不確実性を積極的に評価し、起こりうる複数のシナリオを描く、バックキャスティングのアプローチです。
 
まず、69冊の課題図書、専門家のレポート、事業部長・役員との議論を重ね、事前の知識のインプットを行いました。その上で、21日間のワークショップを行い、スキルトレーニング、調査・議論をし、2035年にむけてのシナリオを作成するという流れです。
 
アウトサイドイン思考を持ち、「社長より高い視座で俯瞰する」「正解を探すのではなく『問い』をたてる」「分かっていないことを明らかにする」「仮説を有識者と対話して検証する」という意識で取り組みました。さらに、物事の因果関係をシステム思考で捉え、複雑に絡み合う多種多様な事柄の関連性をシステムとして把握する知識を学ばせました。
 
このプロジェクトで若手社員がアウトプットした2035年未来シナリオは、社外の経営者・有識者にもインパクトを与えています。「世界の多くの有識者の主張を含んでいるため、統合的な議論の土台になる」「“サステナビリティは人財育成だ”と気づかされた」「戦略や存在価値の再定義検討に重要なインテリジェンスになる」「未来シナリオを、外部とオープンに共創するアプローチ自体が未来志向だ」などコメントをいただいています。

2021年4月、本活動は、社外との共創的なネットワーク構築とリーダー育成、社会課題に関連する長期的な価値創出を担う社長直轄の組織横断バーチャルチーム「未来共創イニシアチブ」に発展して、現在に至ります。
 
最後になりますが、これからの時代を担うエンジニア育成のためには、“未来志向の対話”と“共創”を加速させることが重要だと考えています。主体性、未来志向、問いを立てる力、対話力、共創力、つなぐ力を強化していきましょう。

対談 「エンジニア人材育成に必要なビジネススキルとは」

<Q1>未来志向の人材育成で注力したことはありますか?井下田さんは支援する立場として、玉木さんは自社の立場として教えてください。
 
(井下田氏)経営側は、ジグソーパズルみたいにその隙間にぴったりな人材を探す傾向があります。人はそれぞれ特徴が違いますので、その空いたところにぴったりとはめようとすると、その個人が持つとがった部分を消してしまいます。ジグソーパズル思考ではなく、いびつでもいいので、とんがった部分を活かしていくことが必要です。
過去に人事のビッグデータからよいチームの特性を分析しようとしたことがあります。よいチーム・うまくいっていないチームで、能力・特性・性格などの相関関係がでると思ったのですが、特に関連性はありませんでした。しかし、ある面接官が採用すると継続し、別の面接官が採用すると辞めてしまうことがわかったのです。結果として、面接官育成のプログラムを行ったということがありました。
技術者たちが持つ価値観があるので、本人たちにそれを認識させることが大切です。その志を個人が意識することによって、その社員は未来に向かって伸びていくと思います。
 
(玉木様)戦国時代の武将の武田信玄が「人は石垣である」と言ってます。金太郎飴のように似通ったエリートだけを集めても、弱い石垣しか作れません。石垣とは、大きい石、小さい石、変わった形の石が集まって、強固になります。組織やチームも同様に多様性が重要です。自分たちが作りたい石垣をイメージして語り、そこに対して、足りないところを誰かに教えてもらう。誰かが助けてくれる。これが結果として、知らぬ間に人が引き寄せられてきたり、情報が入ってきたりして、邂逅(かいこう)に繋がります。そのために、外部環境を受け入れて、「未来はこうなるのではないか?」と自分の意見を持ち、対話していく。
井下田さんが言うように志も重要で、「何のために働いているのか」「今の仕事は何のためにやっているのか」と、自分の志をきちんと持っている人と関わりたいです。個人のパーパスを持つことの支援が大切です。
 
(井下田氏)能力がある集団よりも多様性がある集団の方が組織がうまくいくので、いろいろな個を集めることは良いですね。
 
 
<Q2>「対話と邂逅を通して」と説明がありましたが、詳しく教えてください。
 
(井下田氏)「類は友を呼ぶ」と言われるように、ありたい未来を描いて邁進していると、同じ思いを持つ人が引き寄せられてきます。
 
(玉木様)異質の方との出会いを深めていくことを意味しています。偶然の出会いとありますが、自分から未来をオープンに語ってアンテナを立てているから、人や情報を引き寄せているのだと思っています。それによって今までにない道の世界の知が入ってきたり、身近にはいない仲間がいることに気づいたりします。邂逅が人や企業の成長に必要だと思っています。当社の若手たちはこのキーワードを好んで活用しています。
 
 
<Q3>技術者のマインドチェンジに最も必要なことはなんでしょうか?また、アンラーニングはどのように起こしたらよいでしょうか?
 
(玉木様)一般には、完成された事業やピラミッド組織で、立場が上の人の方が知識と経験があって、正解を持っていると思いがちです。ビジネスモデル、外部環境が変わらないときはそれが通用しますが、変化が激しく先が見えない中、正解がない時代は過去の知識・経験は必ずしも通用しません。上司も新しいことを学ばないといけません。例えば、プログラミングや法律などを覚えたとしても、時代が変わると、それも変わっていくかもしれません。人間は一生新しいことを学び続けなければいけません。過去の経験や知識から得たやり方に固執することがありますが、新しい知識を得て新しい体験を重ねることが大切です。
 
(井下田氏)仕事は保身に走ることがあり、自分が行ったことを自分だけのものとして、その価値を残そうとしてしまうことがあります。自分が価値をつくったら、それを仕組み化して、自分がいなくてもできるようにすることに本当の価値があります。そして、自分は新たな仕組みつくりの方に回ることが健全な行動です。その成長過程を喜びにすることがマインドチェンジに必要な気がします。

ご参加者の声

・「未来志向」「対話と邂逅」が心に響きました。
・井下田 久幸氏の「一期二会三尽」という造語はなるほどなと思いました。
・「勝つ七つの習慣、正しい情報で判断する、対話と邂逅」が印象に残りました。
・「いい質問がいい成果を生む」いう言葉が印象に残りました。
・玉木様のお話は非常に興味深い内容でした。感覚的には「大きな風呂敷を広げ、自分でたたむだけでなく、若手に風呂敷を渡してさらに大きく広げていく」印象で、やり切る力、変革するという意志の強さを感じました。
・印象に残った言葉は「未来志向、対話と邂逅」です。
・考える前と行動した後の大切さが印象的でした。
・能力の高い集団が強いのではなく、多様性のある集団が強いという旨の発言が印象に残りました。
・異質との出会い、邂逅。採用担当と離職の相関のお話など面白いと思います。
・「ジグソーパズルの穴埋めをするのではなく、少し尖った個性のある人の積極的採用」「志=個人のパーパスを持つことにより、引き寄せられる」が印象に残った。
・当事者として、考え、行動することの重要性、そしてそのことが大きな成果を生むことを再認識するセミナーでした。
・「不信・不要・不適・不急」を取り除くことが印象に残りました。
・若い人にやりたい事を描かせることは素晴らしいと思いました。
・技術者のマインドチェンジについて参考になりました。
・印象に残っていることは、井下田さんが話した「学んだことを自分で留めない→仕組化して共有する→自分は新たに仕組み作る」ことです。

講師プロフィール

井下田 久幸 (いげた ひさゆき)

◎営業力・技術力・マーケティング力・マネジメント力を兼ね備えたトップエンジニア。日本IBMを皮切りにIT企業4社を渡り歩き、東証一部上場企業JBCCにて執行役員、および先進技術研究所所長にのぼり詰める。55歳で独立し株式会社ドルフィア代表取締役に就任。今も現役のプログラマーとして活躍している。
◎1961年生まれ。青山学院大学理工学部卒業後、日本IBMに入社。出世コースをばく進するが、38歳のとき社員数16人のITベンチャーに志願し転職。程なく倒産の危機に遭遇し、マーケティング部長を担う傍ら、営業支援SEとして現場に入る。以来、足かけ4年にわたり、マイクロソフトなど名だたる競合を相手に、コンペで300戦無敗という結果を残す。その実績を買われ社員数200人の中堅IT企業に社長候補としてヘッドハンティングされたが、その企業が日本IBMに買収される憂き目に。そこで、社員数2700人の東証一企業JBCCに移籍し、執行役員兼ソフトウェア開発責任者に就任。数年後、先進技術研究所を設立し、初代所長となった。
◎日本IBM在職中から経営者向けのセミナーに登壇。巧みな話術で参加者からソフトウェア導入依頼が殺到。登壇回数は2000回を超える。一方で、研究所所長時代に始めたFacebook投稿が人気を博し、友達申請は毎日200件以上、累計20万人を超えている。
◎ドイツ人のピアニストを祖父に持つクオーターとして生まれ、幼少期は父親からのDⅤに苦しんだことも。その経験から、人一倍家族を大切にしている。Facebook投稿を始めたのも、挫折した息子を勇気づけるメッセージを送るためであった。今ではFacebook経由でテレビ・ラジオ出演のオファー、仕事や人生にまつわる相談の依頼が多数寄せられている。本書が初めての著書となる。

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